こんにちは、サメハダです。
トライオートユーザーの方々、証拠金はどの程度入金していますか?
米国市場は2021年9月下旬から中国恒大集団(エバーグランデ)のデフォルト懸念によって株価が下落しています。それに伴い、自分の有効比率が安全か?証拠金は十分か?という点を気にしている方も多いと思います。
わたしはトライオートを行う上で、「絶対に安全といえる証拠金を積んで、安心して熟睡しながら投資したい!」という方針です。安心するためには下落時のパニックに備えて、あらかじめ証拠金の安全性を確認しておくことが必要です。
今回から全三回のシリーズで、有効比率が価格によって変動することについて把握した上で、証拠金の安全性をストレステストという手法でていねいに検証してみたいと思います。

ストレステスト?

株価の暴落など不測の事態をあらかじめ想定して、影響をシミュレーションする金融のリスク管理手法だよ!いっしょに証拠金の状況を整理しよう。
シリーズを通して、安心・安全を追求した証拠金はいくらか?という疑問の解消に取り組みました!
必要証拠金と有効比率について
ロスカットのルールと有効比率
まずは、ロスカットのルールについて簡単におさらいしましょう。
ご存じの方も多いと思いますが、ロスカットは有効比率によって決まります。
- 有効比率100%以下でロスカットされる

有効比率ってなんだっけ?
有効比率とは
有効比率とは、「有効証拠金額÷必要証拠金額×100」という割合です。この割合が100%を下回るとロスカットされます。
有効比率は2つの数値、有効証拠金と必要証拠金の割合を使って求めます。
有効証拠金と必要証拠金とは
有効比率の計算に用いられる有効証拠金と必要証拠金についても簡単におさらいしておきましょう。
- 有効証拠金・・・差し入れた証拠金+評価損益+未実現金利相当額-出金支持額
- 必要証拠金・・・建玉の維持に必要な証拠金
よくある考え方として、価格がどれだけ下落したとしても、強制ロスカットが生じないように十分な証拠金を入金しておこうというスタンスがあります。
わたしはこれをロスカットゼロ証拠金と呼んでいます。後述しますが今回略語を用意しました。
具体的な計算方法はこちらの記事でご紹介しています。
- ロスカットゼロ証拠金・・・価格がどれだけ下落してもロスカットが生じない証拠金を入金しておく
問題は必要証拠金が変動すること
それぞれの項目の詳細については上記の記事でご説明しているため割愛しますが、今回着目しているのは必要証拠金です。
必要証拠金は前日終値によって決まる変動項目です。
今、トライオートユーザーである皆さんの画面で確認できる必要証拠金は前日終値による金額が計算されています。もちろん最低の500円×本数になってはいません。これが混乱しやすいポイントです。
リアルタイムの必要証拠金は、公式の一覧表が示す通り、円換算価格の5分の1です。
- 必要証拠金は価格によって変動し、最低500円。
- 必要証拠金=【前営業日の終値の円換算価格】×5分の1

変動する必要証拠金が有効比率を圧迫する
必要証拠金は最低の500円を想定するのが一般的です。わたしも現時点ではこれを支持しています。

一方で、最低の500円でない場合も考えられます。例えば、最低の500円を想定していたが、実際は1,000円であり、想定より早くロスカットされてしまうという事態も考えられます。
このような事態を避けるために、あらかじめ最大で〇〇円ということがわかっておけば、その分の差入証拠金を追加で積むことで、ロスカットという最悪の事態を回避できると考えられます。


分母が増えた分、分子も増やすんじゃ
リスク管理の枠組みで対応する
面白そうなテーマなので、この問題についてリスク管理の枠組みを使ってじっくり考えてみたいと思います。
一般的には、リスクに対しては、把握→評価→対応というプロセスで管理を行います。

- リスクの把握・・・様々な問題の中で、対処すべき課題を見つける。
- リスクの評価・・・可能性や影響度などを定量的に評価する。
- リスクへの対応・・・対応(許容、移転、軽減、回避など)を決める。

変動する必要証拠金についての対応を決めるんだね!

ここからはサメハダが考察した内容をご紹介します!
プロセスに沿って考えてみよう!①リスクの把握

まずは「リスクの把握」からやっていきましょう。
現時点で把握しているリスク
ドコからドコまで把握するのかという話は様々ありますが、まずは必要証拠金が変動する値であることと、それによって有効比率が圧迫されることが分かっています。
- 変動する必要証拠金によって有効比率が圧迫される。
必要証拠金の最大金額はどのくらいか
ここでは、例示を用いて変動する必要証拠金の最大金額を具体的に算出してみます。
先ほどご紹介した、ロスカットゼロ証拠金の記事にある例示を見ていきましょう。
TQQQを例に考えます。140ドルから40ドルのレンジで40本のトラップを仕掛けたと仮定。

- トラップ数は40本
- 101ドル~140ドルのレンジに1ドル毎にトラップ
- 利確幅は5ドル
- 想定ドル円レートは110円
以下、パターンAとBの2つのケースを想定します。パターンAは全ポジションを保有した場合の試算で、パターンBはより現実的な状況を想定した試算です。
- パターンA・・・一度上がりきって全てのポジションを持ってから下落する。保有は最大で40本。
- パターンB・・・現在価格から下落する。保有は最大で30本。
中間の計算を割愛し、結果だけ示します。
ロスカットゼロ証拠金>①必要証拠金+②最大評価損-③未実現金利相当額+④出金支持額
ロスカットゼロ証拠金の項目 | 想定 |
---|---|
①必要証拠金 | 500円×本数 |
②最大評価損 | 元本合計(平均価格×本数×ドル円レート) |
③未実現金利相当額 | ▲0.519円×本数×日数 |
④出金指示額 | 指示しない場合はゼロ |
パターンA(一度上がってから下落)とパターンB(現在価格から下落)のロスカットゼロ証拠金はそれぞれ次の通りでした。
ロスカットゼロ証拠金の項目 | パターンA | パターンB |
---|---|---|
①必要証拠金 | 20,000円 | 15,000円 |
②最大評価損 | 530,200円 | 364,650円 |
③未実現金利相当額 | ▲7,577円 | ▲5,683円 |
④出金指示額 | 0円 | 0円 |
ロスカットゼロ証拠金(①+②-③+④) | 557,777円 | 385,333円 |
なお、③未実現金利相当額は負の値を引くのでプラスになることに注意です。

数字がいっぱいだけど、重要なのは最後の合計値でございます!
はい。結果は、パターンAが557,777円、パターンBが385,333円とのことでした。
今回は、①必要証拠金を最大値に変更します。②~④は変更ありません。
必要証拠金の最大値とは
例示に沿って、パターンA、Bの円換算価格から、①必要証拠金の最大値を計算します。
パターン | 円換算価格 | 単価(最大) | 本数 | 必要証拠金(最大) |
---|---|---|---|---|
A | 140㌦×110円/㌦=15,400円 | 3,100円 | 40本 | 124,000円 |
B | 130㌦×110円/㌦=14,300円 | 2,900円 | 30本 | 87,000円 |
なお、パターンBの円換算価格に関しては、現在価格の127㌦を使った方が例示に忠実ですが、保守的に計算するために130㌦(大きい方)を採用しました。(127㌦の場合に必要証拠金は2,800円。差は100円であり誤差程度です。)

本数はAが40本、Bが30本。最大の必要証拠金はパターンAが124,000円、パターンBが87,000となります。
この①必要証拠金の最大値を使ってロスカットゼロ証拠金を求めます。
なお、ロスカットゼロ証拠金と区別するために、ストレス・ロスカットゼロ証拠金とひとまず呼ぶことにします。それぞれ略語も用意しました。
- MM・・・Maximum Margin(ロスカットゼロ証拠金)
- SMM・・・Stressed Maximum Margin(ストレス・ロスカットゼロ証拠金)

それでは、①を最大値に変更した場合の証拠金合計(SMM)を計算します。
ストレス・ロスカットゼロ証拠金の項目 | パターンA | パターンB |
---|---|---|
①必要証拠金(最大) | 124,000円 | 87,000円 |
②最大評価損 | 530,200円 | 364,650円 |
③未実現金利相当額 | ▲7,577円 | ▲5,683円 |
④出金指示額 | 0円 | 0円 |
ストレス・ロスカットゼロ証拠金(①+②-③+④) | 661,777円 | 457,333円 |
①を最大値に置き換え。パターンAが661,777円、パターンBが457,333円となりました。
それぞれ比較すると次のとおりです。


SMM(ストレス・ロスカットゼロ証拠金)は、MM(ロスカットゼロ証拠金)の5.8倍~6.2倍。無視できないレベルの金額となっています。
リスクの評価と対応
ここまでを「リスクの把握」として、ひとまず完了させたいと思います。
続く「リスクの評価」と「リスクの対応」については、次回の記事で考察したいと思います。



証拠金はベリーインポータンツ。三部作にしたので懲りずにみてやってね~
総括
簡単に総括したいと思います。
- ロスカットが発生する条件は、「有効比率が100%以下」になったとき。
- 十分な証拠金を差し入れることで、有効比率が100%以下ならない状態を作り出せる。このときの差入証拠金をMM(Muximum Margin)と定義した。
- さらに、保守的な場合を想定するため、変動要因である必要証拠金について理論上の最大値を用いて計算した。この時の差入証拠金をSMM(Stressed Maximum Margin)と定義した。
- 例示のなかでSMMは、MMと比較して5.8倍~6.2倍大きいことがわかった。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、ロスカットゼロ証拠金(MM)にストレスをかけたストレス・ロスカット証拠金(SMM)を計算してみました。
- では実際、このSMMはどの程度の効果があるのか?
- 発生する確率は?
- 実際にここまで考慮するべきなの?
- 資金効率が悪くなるのでは?
次回はこのような内容について分析したいと思います。
今回は以上です!最後まで読んでいただきどうもありがとうございました!

次回は「リスクの評価」です。
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