こんにちは。サメハダです。
皆さん、今年の投資成績は好調でしょうか?
昨今はレバレッジETFの規制が話題となっていて目が離せないですよね。
今回はトライオートETFの取扱銘柄であるS&P500ダブルの過去データを分析します。
下落率をはじめとする値動きの情報をもとにレンジ戦略を考察したいと思います。

TQQQとの違いも意識だね!
分析の目的
トラップを設定するために、決めなければならないのが上値とレンジ幅です。

トラップのレンジは狭すぎても、広すぎても良くありません。
- 狭すぎる・・・レンジを外れると機会損失
- 広すぎる・・・資金効率低下
詳しくはTQQQの記事で解説しています。こちらもご参考ください。
ちょうど良いレンジを探るため過去データを分析します。
以下、S&P500についてはティッカーであるSSOと表記します。
アプローチ方法
3つの切り口
ここ15年のSSOの価格チャートはこのようになっています。直近の数年はかなり好調です。

価格チャートを次の3つの切り口で分析したいと思います。
- 1か月間の値動きの高低差
- 過去最高値からの最大下落率
- 過去最高値を更新するために要した期間
分析用データ
使用するデータは、2006年以降の日足データです。今回もインベスティングドットコムさんからダウンロードしています。どうもありがとうございます。

Investing.comさん、ありがとうございます!
分析Ⅰ:1か月間の値動きの高低差
価格の推移
1か月間の高低差として、その月の最高値と最安値の差を計算します。
1か月の高低差=その月の最高値-その月の最安値

上のチャートでは、赤が高値、青が安値です。見た感じ極端な差はなさそうです。差は直近期間の方が大きく見えますが、ベースの価格が異なるためまだ判断つかないですね。
高低差のヒストグラム
1か月間の高低差データは182個取れました。2006~2021年の182か月分です。これをヒストグラムにしてみます。なお、ベースの価格が異なるので例によって金額ベースでなく割合ベースにして表示します。
1か月の高低差(割合)=(その月の最高値-その月の最安値)/月初の終値

ヒストグラムによると最頻値は11%~12%で計18回ありました。次に多いのが7%~8%と8%~9%のゾーンで17回ずつあります。10%以下の小さな値で安定しているようです。また、35%以上は6回ありますが全体と比較して少なめです(ショック時の対応については後述します。)
パーセンタイル | 高低差 |
---|---|
10%点 | 6% |
20%点 | 7% |
30%点 | 8% |
40%点 | 10% |
50%点(中央値) | 11% |
60%点 | 13% |
70%点 | 15% |
80%点 | 18% |
90%点 | 25% |
99%点 | 81% |
度数分布表も確認します。
まず中央値が12%の価格差ということがわかります。シンプルに考えて12%程度の下落を想定しておけば2回に1回(つまり2ヵ月に1か月)はそのレンジに収まると考えられます。正確には”価格差”なので上昇も含まれています。また、下落したとしても、必ずしも月初から一気に下落するわけではないので、実際はもっと下落率は小さいと考えられます。12%は保守的な水準です。
- 1か月の高低差は比較的安定
- 高低差の中央値は12%
分析Ⅱ:過去の最高値からの最大下落率
価格の推移
次に、過去最高値からの最大下落率をみてみましょう。赤が過去最高値、青が終値です。

1か月の高低差と比べて赤の領域が増えており、過去最高値と比較すると下落が大きいることがわかります。
下落率のヒストグラム
先ほどの同様にヒストグラムを割合ベースで表示します。日足データなのでデータ数は3,809個(3,809日分)あります。
下落率=(過去の最高値-その月の終値)/過去の最高値

グラフの形が先ほどの高低差とは異なり山型ではありません。2%以下と50%超の2つが極端に高いです。最頻値は2%以下の953日。次に多いのが50%超の725件です。50%超は725/3809=0.19で19%もあります。
下落率を時系列で見てみます。2008年代からのリーマンショック、2011年代の欧州危機、そして2020年のコロナショックにおいて下落率が50%を超えていることがわかりました。下落率の最大は2009年3月9日リーマンショック時の86%です。

ショック時には最大下落幅が極端に大きくなる傾向がわかりました。レンジ戦略においては、やはり通常時とショック時で場合分けして考えた方が良さそうです。
最大の下落が発生した時期はTQQQと異なるようです。TQQQはコロナショック時の73%が最大です(2020年3月23日)。SSOはリーマンショック時が最大。集計期間が異なるため単純な比較はできませんが、改めてリーマンショック恐るべしといったところです。(TQQQについてはこちらの記事で分析しています。)

パーセンタイル | 最大下落率 |
---|---|
10%点 | 0% |
20%点 | 1% |
30%点 | 3% |
40%点 | 6% |
50%点(中央値) | 11% |
60%点 | 20% |
70%点 | 38% |
80%点 | 49% |
90%点 | 63% |
99%点 | 78% |
度数分布表も確認します。中央値の最大下落率は11%と先ほどとほぼ同じです。下落率を11%程度見越しておけば2回に1回(つまり2日に1回)はレンジ内に収まる計算です。

ただし、パレート図を見ると高低差と最大下落率には傾きに差があることがわかります。最大下落率(青い線)では、大きく下げるケースの出現率が高いことに注意です。くり返しですが、このような高い下落率に対応するためにショック時の対応は別途考えておいた方が良さそうです。
- 最大下落率の中央値は11%と高低差とほぼ同じ。
- 一方、下落率は拡大するケースも多い。ショック時の備えが必要。
分析Ⅲ:過去最高値を更新するために要した期間
過去につけた最高値を再び更新するまで100営業日以上かかったケースはこれまでに5回ありました。
ランク | 営業日数 | 期間 |
---|---|---|
1 | 1624日 | 2007年7月13日~2013年12月20日 |
2 | 287日 | 2015年5月18日~2016年7月11日 |
3 | 196日 | 2018年9月20日~2019年7月2日 |
4 | 147日 | 2018年1月26日~2018年8月24日 |
5 | 139日 | 2020年2月14日~2020年9月1日 |

リーマンショック時が断トツに長く1624営業日ありました。やはりリーマンショック恐るべしです。
2番目は2015年の287日です。原油価格高騰と世界同時株安が進行していた時期でしょうか。3位~5位は200営業日以下です。6位以降は100営業日未満となります。
これを見ると2018年以降は100~200営業日かけて高値を更新する周期のように見えます。また直近の上昇し続ける局面はかなり珍しいかもしれません。
リーマンショックからの回復には1000営業日以上かかっていました。一方で、日経平均株価は1989年12月の史上最高値である39,815円を現在に至るまで高値を更新できていません。米国との差は顕著です。

- リーマンショック後の株価の更新には1,624日要した。
- そのほかのショックでは株価の回復に100~200営業日要した。
論点整理と考察
分析Ⅰ~分析Ⅲを元にレンジ戦略について考察したい思います。
ロスカットリスクは証拠金でカバーする
トライオートETFを利用するにあたって、価格下落によるロスカットのリスクがあります。ロスカットのリスクは基本的に証拠金を多く積むことで回避できます。レンジとロスカットは無関係です。(正確には本数と価格はロスカットレートに反映されますが、リスク管理の問題であり戦略とは別次元の話しです。)
ロスカットのリスクは証拠金で対応するものとして今回の考察からは除外します。
ロスカットリスクは証拠金で対応する。
含み損のリスクをどう考えるか
さらに価格下落には、含み損を抱えるリスクがあります。これはどう考えるべきでしょうか。次の2つの考え方が参考になるかもしれません。
第一に、定量的な考え方です。これまで過去チャートを見てきたように米国株は高値を更新し続けてきました。リーマンショッククラスの長期に渡る不況もあるものの、大体は100~200営業日で高値を更新しており、今後もそのような値動きは期待できそうです。
第二に、定性的な考え方です。マクロ経済において世界人口の増加はGDPの増加を生み、それらは資本主義経済が存続し続ける限り株価の上昇に寄与すると考えられます。米国は技術革新が起こりやすい風土であり、株主還元を重視した企業経営を尊重する市場です。今後も成長が期待できると考えられます。
したがって、含み損を抱えるリスクはあるものの影響は限定的であると考えます。そもそも投資において長期的目線がセオリーです。一時的な含み損は許容する必要があります。個人的な事情で含み損は許容できない場合もあるかもしれませんが、それはやはり戦略とは別次元の問題となるので区別して考える必要があります。
含み損のリスクを限定的と考えるかどうか。
効率(機会損失のリスク)に対する戦略
以上から、価格の上昇はもちろん、価格の下落にもしっかりついていくことで値動きによるリターンが得られると考えられます。
上昇も下落も追いかけるようレンジを設定する。
では、レンジを決める要素は何か
価格を追ってレンジを設定する場合、レンジを狭くした方が資金効率は上がります。これはレンジ内で集中投資する想定です。したがってレンジは狭ければ狭いほど資金効率が良いというのが私個人の結論です。そしてどこまで狭くできるかは、取引のメンテナンスの頻度に左右されると考えています。つまりどのくらいの期間取引画面を放置するかその日数によってレンジ戦略が決まるという考え方です。
レンジは狭いほど資金効率が上がる。どの程度狭くするかはメンテナンスの頻度による。
メンテナンス頻度
例えば私の場合、毎日取引画面は見ますが、毎日設定を変更するのはつらいです。緊急時はもちろん別ですが。
1週間(5営業日)くらいの期間であれば、週末もあるのでメンテナンス可能だと見積もります。そこで分析Ⅰの試算結果から、1か月高低差の25%点である7.5%(平均を計算)が見込みのレンジ幅となります。価格が120㌦だとしたら120㌦×7.5%=9㌦です。
パーセンタイル | 高低差 |
---|---|
20%点 | 7% |
30%点 | 8% |
上値については自由ですが、同じ程度の幅を設定しておくとわかりやすいと思います。
個人的には実際もう少しメンテナンス頻度に余裕が欲しいのと、キリ良くしたいので、10㌦~15㌦(上下合わせて20㌦~30㌦)というレンジを設定するかもしれません。
個人的には、キリよく上下合わせて20㌦~30㌦程度を想定。
今回は1か月の高低差を算出しましたが、TQQQでは1day、2days、3daysの高低差を詳細に計算しています。より攻めたレンジ幅とするなら日単位のデータを使った方が正確です。機会があればSSOでも計算しようと思います。
レンジアウトした場合の追加資金
注意点として、「狭いレンジで集中投資してしまうと、下落してレンジアウトした場合に追加発注する資金がなくなって困るじゃん」という問題が発生します。これについては全くその通りです。
しかしながらこの問題はレンジを広げても起こります。解決するにはレンジの下限を0㌦にするしかないのですが、それをやってしまうと未可動部分が増え、資金効率が落ちます。ジレンマの構造です。

着目したいのは、レンジを狭くした場合のレンジアウトが「可能性」であるということです。これには「不安」という心理的な側面も影響するので、いったんレンジの戦略とは区別して考える必要があります。私の至った結論としては次のとおりです。
(1)レンジアウトする可能性は確かにあるが、過度な不安視は不要。効率を優先する。
(2)レンジアウトした場合に備えて、追加の資金は確保しておく。未可動部分の資金も充てる。
(3)どの程度の資金を用意するかは、個人の属性やリスク許容度による。一般的な正解はない。
「下がるかもししれないからレンジを広げておく」ではなく、「下がってからレンジを広げる」という戦略です。
また、(2)の「未可動部分の稼働」に関しては、常に一定の未可動資金がある状態を確保することで、上昇相場に対応しつつ、資金バッファも持つという理想的な戦略が立てられるではないかと期待を持っています。これについては追加で研究し、妙案があれば公開したいと思います。

妙案カモン!
補足ですが、とは言っても、私はレンジを広げておくと安心できる派です。理論上は狭い方が効率が良いですが、総合的に考えてレンジの下限をそこそこ下げておくことに賛成しています。
総括
戦略のついてまとめます。
通常相場の戦略
- ロスカットリスクは証拠金でカバーする。
- 含み損リスクは100~200日は耐える覚悟。米国株の回復力を信じる。
- レンジは狭めることで資金効率が上がる。メンテナンスの頻度によってレンジを決める。
- レンジを狭めることで金融ショック時に過剰な含み損ポジションを持たずに済むというメリットもある。
- メンテナンスの頻度によるレンジの決定には、今回の高低差データを参考にできる。
ショック相場の戦略
- ショック時は急激に下がって、徐々にあがるパターンが多い。いったんレンジを外れても後から設定することで機会損失は限定的となる。(その方が過剰な含み損ポジションを持たないずに済むため精神衛生的にも良い。)
- 追加資金は十分に用意する。未可動部分の資金も考慮。
- リーマンショックでは、株価回復まで1624営業日掛かった。同等かそれ以上のショックも起こり得ると心の準備をしておく。
- 狼狽売りはしない。証拠金は十分に積み、余剰資金で取り組む。
- 下落相場や横ばい相場でも利益を獲得できるチャンスもあるため、価格を意識しすぎずに、値動きに注目する。

心の準備も大切だね!
おわりに
いかがでしたでしょうか。
今回はSSOのレンジ戦略についてデータ分析結果と個人的な考察をまとめました。
SSOはS&P500というアメリカを代表する指数がベースなのでTQQQよりも長期投資に向いているかもしれませんね。
あくまで個人の見解ですが、今回の内容が少しでも参考になればうれしく思います。
最後まで読んでくれてありがとうございます!ではまた!

SSOでがんばろう!
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