
今の彼氏と結婚すべきか、それとも別の相手を探すべきか・・・
それが問題だ。

どうすれば一番良い人と結婚できるかは答えができています!
秘書問題はこんなときに使える
結婚とは人生の一大イベントです。
死ぬまで一緒に暮らすパートナーとなるのですから慎重に決断する必要があります。
しかし慎重になりすぎると迷いが生じてきます。

はたして今の相手が一番相応しい相手なのだろうか?
ひょっとしたら今の相手よりももっと良い人がいるのではないだろうか?
このように考えるのは仕方のないことですが、慎重なりすぎた結果、結局結婚せずに時間だけが過ぎ去っていくということもあり得ます。
これは人生の命題かもしれませんが、なんと数学的には最適解が存在します。
今後の決断のヒントに活用してみてください!
秘書問題とは
秘書問題の概要
秘書問題とは、別名「結婚問題」や「お見合い問題」ともいわれる数学の最適停止問題の一種です。
命題の条件は次のようなものです。
- あなたは秘書を一人雇いたい。
- 応募者の数が事前にわかっている(例えばN人)。
- ランダムで一人ずつ面接を行い点数をつける。
- 毎回の面接の後、点数に基づいてその人を採用するかどうかをすぐに決断する。
- 一度不採用にした応募者を後から採用することはできない。


このような状況で最良の応募者を採用しようとするんだね!
全員を見てから決めることはできないよ。
秘書問題のこたえ
最も優秀な人を採用することのできる行動は以下のようになります。
- 最初のN/e人の応募者を全員見送る。(eはネイピア数で約2.718)
- 見送った応募者の中で一番高い点数を覚えておく。
- それ以降の応募者の中でその点数を越える人がいたら採用する。


この方法のときによって、最も優秀な人を採用する確率が1/e=約37%と最大になります。
結構高確率な気がします。
つまり、応募者が100人いた場合、最初の37人を全員見送ります。そして38人目以降は見送った人達の中で一番優秀な人を超える人がいればその人を採用するという戦略です。
これだけで3回に1回以上は最も優秀な人が採用できるのですから、お得ですよね。
結婚戦略にあてはめると
全員を見てから決めることが許されていない点が秘書問題と結婚戦略の似ている要素です。

今の相手より未来の誰かの方が相応しいかも。でももし良い人がいなかったら目も当てられない。。。
秘書問題を結婚戦略にあてはめるためにいくつか前提をおきます。
- 仮にあなたが大学を卒業して社会に出てからすぐ婚活を始めるとします。
- 23歳から1年ごとに付き合っては別れを繰り返し、39歳までの17年間で17人の恋人ができると仮定します。
- この17人の中で最も点数の高い人と結婚する確率をできるだけ上げたい。
N=17なので先ほどの式にあてはめると次の通りの行動戦略になります。
- 17/e=6.25なので最初の6人は見送る。
- 最初の6人で最も良い点数を暫定一位とする。
- 7人目以降で暫定一位を超える人がいたらその人と結婚する。



なるほどなー。

次の章で導出過程を示すよ。興味のない人は章ごと飛ばしてね。
導出過程
見送る人数を \(k\) 人とし、 \(k+1\) 番目以降の人において「それまでで最も良い人」が現れたら結婚するという戦略をとります。
この戦略において、「最良の相手」と結婚する確率 \(P(k)\) が最も高い \(k\) の値を求めてみましょう。
全体の人数を \(n\) 人「最良の相手」が \(t\) 番目にいると仮定します。
このとき3つのパターンが考えられます。

条件1: \(t\) の位置 |
---|
\(t<=k\) のとき |
結果➡「最良の相手」が見送られてしまうため選ばれない。さらに「最良の相手」が暫定一位となるので結局誰とも結婚できない。

条件1: \(t\) の位置 | 条件2:暫定一位の点数 |
---|---|
\(t>k\) のとき | 「最良の相手より前にいる人たちの中で一番点数の高い人」が \(k+1~t-1\) の位置にいる。 |
結果➡「最良の相手」の順番が来る前に「最良の相手より前にいる人たちの中で一番点数の高い人」が選ばれるため「最良の相手」は選ばれない。

条件1: \(t\) の位置 | 条件2:暫定一位の点数 |
---|---|
\(t>k\) のとき | 「最良の相手より前にいる人たちの中で一番点数の高い人」が \(k\) 番目以内の位置にいる。 |
結果➡「最良の相手より前にいる人たちの中で一番点数の高い人」が暫定一位となるため「最良の相手」まで順番が回り、最終的に「最良の相手」が選ばれる。
よって「最良の相手」が選ばれるのはパターン③のときのみ。
\(t\) 番目に「最良の相手」がいる確率は \(\frac{1}{n}\) 、「最良の相手より前にいる人たちの中で一番点数の高い人」が \(k\) 番目以内の位置にいる確率は \(\frac{k}{t-1}\) であるため、確率 \(P(k)\) は
$$P(k)=\frac{1}{n}\sum_{t=k+1}^{n}\frac{k}{t-1}$$
$$=\frac{k}{n}(\frac{1}{k}+\frac{1}{k+1}+…+\frac{1}{n-1})$$
\(n\) が十分大きいとき指数関数のマクローリン展開式(注)より
$$\frac{1}{k}+\frac{1}{k+1}+…+\frac{1}{n-1}\simeq\log\frac{n}{k}$$
したがって \(P(k)\) は
$$P(k)=\frac{k}{n}\log\frac{n}{k}$$
これが最大となる \(k\) を求めたい。では \(P(k)\) はどのようなグラフだろうか。
扱いやすいように \(n=100\) とすると \(P(k)\) は次のような上に凸のグラフとなる。

したがって、 \(P(k)\) が最大となるのは、傾きが0のときとわかる。
\(P(k)\) を \(k\) で微分すると
$$P’(k)=\frac{1}{n}\log\frac{n}{k}-\frac{1}{n}$$
\(P’(k)=0\) となるときの \(k\) の値は
$$\frac{1}{n}\log\frac{n}{k}-\frac{1}{n}=0$$
$$\frac{1}{n}\log\frac{n}{k}=\frac{1}{n}$$
$$\log\frac{n}{k}=1$$
$$\frac{n}{k}=e$$
$$k=\frac{n}{e}$$
このとき確率 \(P(k)\) は最大値をとり、その値は
$$P(\frac{n}{e})=\frac{\log e}{e}=\frac{1}{e}\simeq37%$$
となる。
$$e^x=\sum_{k=0}^{\infty }f\left(\frac{x^k}{k!}\right)$$

導出過程はここまでだよ。
疲れた人は子猫の画像でも見てリフレッシュしてね。

理論と現実世界の違いに注意
はい。ここまで秘書問題を結婚戦略に当てはめた場合を見てきました。
しかし現実は計算で求められるほど単純ではありません。
計算の前提としてムリがありそうな部分を考えてみました。
何人と交際するかわからない
この計算は応募者数がN人と事前にわかっていることが前提です。
しかし現実には自分が何人と付き合えるはわかりません。毎年一人というサイクルも早すぎる気もします。
ハリウッドスターのレオナルド・ディカプリオでさえ20年で8人ですからね。※ただしモデルに限る。

「レオナルド・ディカプリオは25歳以上の女性とのデートを拒絶する」(出典)
点数の付け方がむずかしい
結婚相手の優劣を数値化するのはとても難しいと思います。
性格・容姿・スタイル・年齢・学歴・仕事・年収・家柄・貯金額・健康状態・頭の良さなど見るべき項目も様々です。
通知表のように各項目に点数をつけたとしても無難に全科目平均して高い方が良いのか、一部が特出して高得点の方が良いのか好みが分かれるところです。
考えれば考えるほど育成ゲームのような感覚に陥っていきます。
点数の判断基準が時間経過によって変わる
さきほどの点数の付け方が仮に決まったとしても、将来的に同じ尺度が使えるとは限りません。
最初は容姿やスタイルを重要視していたけど後から年収を重要視するかもしれませんし、最終的には健康状態や性格が重要になるかもしれません。
自分の好みが変わり得るということを考慮する必要があります。
応募者の属性が時間経過によって変わる
秘書問題では、応募者が100人列を作ってならんでいました。彼らは同じ1つの募集要項を見て応募しています。
一方、結婚戦略の場合、申込日が異なるので募集要項が一定ではありません。自分が年齢を重ねている分応募者のレベルや考え方なども変わってくる可能性が高いです。
誰とも結婚しない確率が存在する
17人の交際者の中で最も点数が高い人が最初の6人の中に入ってしまうと、その人が暫定一位になってしまいます。7~17人の中にそれを超える人はいないので結局誰とも結婚することがなく終わってしまいます。
確率としては1/e=約37%存在する計算です。つまりこの戦略をとると次のような結果と確率になります。
- 誰とも結婚しない・・・約37%
- 最も点数の高い人と結婚する・・・約37%
- 2番目以下のだれかと結婚する・・・約26%
最善の応募者を採用する確率を上げることに固執すると、誰も採用しない確率も上がってしまいます。

誰とも結婚しないのは避けたいな。
ベストでなくてもいいのでなるべく良い人を採用したいという場合の方が多いかもしれません。
その場合は問題が「基本報酬問題」という形に派生します。詳細は割愛しますが、この場合最初の何人をスキップするかの最適解が√Nとなります。先ほどの結果より少なくなり、100人だと10人見送る、17人だと約4人見送るということです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は秘書問題とそれを結婚戦略に当てはめた場合についてご紹介しました。
知っているとかなりためになる理論的な考え方だと思いますが、現実世界で適用するにはかなりタフなメンタルが必要かもしれません。
結婚はゴールではなくスタートなので夫婦で一緒に成長できたら一番いいですね!

今回は以上です。引き続き一緒にがんばりましょう!
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