こんにちは。サメハダです。
前回のロスカット値幅の計算に引き続き、今回は証拠金がテーマです。
理論上ロスカットが起こりえない証拠金とはどのように求められるのでしょうか。
安全運用を目指す上で重要なポイントなのでしっかり考えていきたいと思います。

証拠金を考えよう!
結論
結論から述べます。次の式に基づいて証拠金を計算しました。
ロスカットゼロ証拠金>①必要証拠金+②最大評価損-③未実現金利相当額+④出金支持額
下記から各論を述べます。
前回の振り返り
前回はインヴァスト証券公式の”ロスカットまでの値幅”の計算を行いました。最終的に”ロスカットまでの値幅”は、大きく下落した場合のリスク管理とは別モノだと理解しました。
前回の内容はこちらです。
今回は、大きく下落した場合でも安心できる”ロスカットのない証拠金”について考えたいと思います。
公式の見解を再び確認する
現時点では言及なしだが
ロスカットのない証拠金についてインヴァスト証券の公式ページを探しましたがそのような記載は見つまりませんでした。
そもそもインヴァスト証券は、ロスカットのトリガーとして”有効比率“を使っています。


有効比率とは、”有効証拠金”と”必要証拠金”の割合です。”差し入れた証拠金”は”有効証拠金”の計算に含まれています。
$$有効比率=\frac{有効証拠金}{必要証拠金}×100$$
有効証拠金・・・差し入れた証拠金+評価損益+未実現金利相当額-出金支持額
必要証拠金・・・建玉の維持に必要な証拠金※表あり
インヴァスト証券としては、「ここまでお膳立てしたのだから、あとは自分で計算してね?」って感じでしょうか。
課題の再設定
公式の定義が確認できたところで改めて用語の整理と課題の再設定を行います。
上の式で公式が使っている差し入れた証拠金のことを短く”差入証拠金”と呼ぶことにします。
そして、今回の分析の目的である、ロスカットが起こりえない証拠金を便宜上”ロスカットゼロ証拠金”と定義します。

先ほどの式に当てはめると、「有効証拠金>必要証拠金となる差入証拠金を求める」という課題設定になります。さらに式を展開すると、ロスカットゼロ証拠金に必要な項目がはっきり見えてきます。
”有効証拠金>必要証拠金”となる差入証拠金のことを”ロスカットゼロ証拠金”と表現する
ロスカットゼロ証拠金>①必要証拠金+②最大評価損-③未実現金利相当額+④出金指示額
$$有効比率=\frac{有効証拠金}{必要証拠金}×100>100\%$$
両辺に必要証拠金を掛けて、
$$有効証拠金>必要証拠金$$
有効証拠金=差入証拠金+評価損益+未実現金利相当-出金支持額を代入して、
$$差入証拠金+評価損益+未実現金利相当$$
$$-出金支持額>必要証拠金$$
移行すると、
$$差入証拠金>必要証拠金$$
$$-評価損益-未実現金利相当額+出金支持額$$
このときの差入証拠金が”ロスカットゼロ証拠金”となるために、左辺が右辺の最大値を上回る必要がある。よって、”-評価損益の最大値”を”+最大評価損”に書き換えて、
$$ロスカットゼロ証拠金>必要証拠金$$
$$+最大評価損-未実現金利相当額+出金支持額$$
(※未実現金利相当額の符号について公式へ確認したところ、「必ず支払う金額となっている」とのことでした。つまり”+未実現金利相当額”は常にマイナスの値となり、逆に”▲未実現金利相当額”は常にプラスの値となります。この記事内の符号は公式の表記通りに記載しております。)
これで、ロスカットゼロ証拠金の算定式ができました。
さて、計算する前に、トライオートETFの投資歴が長い先人の方々はどのように考えているのでしょうか。ちょうど良い例がありました。
認定ビルダーの考え方
認定ビルダー
認定ビルダーの鈴さんのプログラムを確認させていただきました。鈴さんの素晴らしいロジックに感謝致します。


鈴さんのプログラムでは大暴落でも継続運用できるよう想定ロスカットレートをゼロにするように資金設計されており、その根拠となっている計算では、”必要証拠金”と”余裕資金”が使用されていました。
認定ビルダーのお墨付き?!
これは先ほど紹介した式の①と②に相当します。
ロスカットゼロ証拠金>①必要証拠金+②最大評価損-③未実現金利相当額+④出金支持額
「大暴落でも継続運用」というコンセプトも私の目指すところであり思想が一致します。まるで認定ビルダーのお墨付きをもらったような気持ちです。(勝手に思ってすみませんw)
ロスカットゼロ証拠金は①②でほとんど決まるため鈴さんの手法で問題ないと考えています。しかしせっかくなので、ここからは③④も含めそれぞれの計算方法や想定についてご紹介したいと思います。
具体的な計算方法
TQQQを例に考えます。140ドルから40ドルのレンジで40本のトラップを仕掛けたと仮定します。

- トラップ数は40本
- 101ドル~140ドルのレンジに1ドル毎にトラップ
- 利確幅は5ドル
- 想定ドル円レートは110円
さらに、パターンAとBどちらの場合も計算したいと思います。パターンBの方が現実的な想定かと思います。パターンAは最悪の場合を想定するときに使います。
- パターンA・・・一度上がりきって全てのポジションを持ってから下落する。保有は最大で40本。
- パターンB・・・現在価格から下落する。保有は最大で30本。
①必要証拠金
まずは必要証拠金です。これは非常に明確で、公式から一覧表が公表されています。

前回の記事でも触れたので詳細は割愛しますが、TQQQの価格が下がると必要証拠金も下がり、最終的に500円になる仕様です。TQQQ価格は前営業日の終値を使用します。円換算価格¥0~¥2,500(0㌦~約22.7㌦)は一律500円です。22.7ドル以下は一律なのでバッファもある程度効いていると考えられます。
従って必要証拠金については、一律500円としたいと思います。

ロスカットゼロ証拠金の項目 | 想定 | 備考 |
---|---|---|
必要証拠金 | 500円×本数 | ※鈴さんと同じ |
パターンA・・・500円×40本=20,000円
パターンB・・・500円×30本=15,000円
②最大評価損
最大評価損は価格が0のときに発生します。つまり元本合計がこれに当たると考えられます。これも鈴さんと同じです。
1口の元本は、価格×為替レートで計算できますね。(下記参照)
ロスカットゼロ証拠金の項目 | 想定 | 備考 |
---|---|---|
最大評価損 | 元本合計 (平均価格×本数×ドル円レート) | ※鈴さんと同じ |
パターンA・・・平均価格120.5㌦×40本×為替レート110円=530,200円
パターンB・・・平均価格110.5㌦×30本×為替レート110円=364,650円
トラップ元本合計の計算はエクセルを使って1本ずつ計算しても良いのですが、公式を使うと手っ取り早いです。
$$元本合計=平均価格×本数×ドル円レート$$
$$平均価格=\frac{最大トラップ-最小トラップ}{2}$$
これはいわゆる等差数列の和の公式から導かれます。

公式は覚えなくてOKだよ!
初項 a,公差 d,項数 n,末項lの等差数列の初項から第 n 項までの和 Sn は,
$$Sn=\frac{n(a+l)}{2}$$
$$=\frac{n}{2}\{{2a+(n-1)d}\}$$
③未実現金利相当額
次に金利の計算です。金利調整額に関する公式Q&Aは次のようになっています。


これは難しいよ!
かなりややこしいですが、買いの場合は0.9%+Libor(ライボーと読みます)を使っているようです。Liborは世界金利の親玉みたいな存在ですが、ここでは割愛したいと思います。
いろいろ考えましたが、上記Q&Aの通り計算するのは諦めて、金利表を使うのが一番わかりやすいと思いました。Q&Aの通り操作すると金利表が出てきます。(スマホでも見れます。)

表は1日当たりの金額です。TQQQ買い1口の支払い金利は0.519円発生することがわかります。
期間は多めに見積もって1年=365日とします。ただし、1年も放置することはまずないと思いますので、半年や1か月でも問題ないかもしれません。他にも様々な不確実要素があり正確な想定は難しいですが、あくまで今回は保守的にやっています。
ロスカットゼロ証拠金の項目 | 想定 | 備考 |
---|---|---|
未実現金利相当額 | ▲0.519円×本数×日数 | ※鈴さんはカウントせず |
パターンA・・・1日当たりの金利▲0.519円×40本×365日=▲7,577円
パターンB・・・1日当たりの金利▲0.519円×30本×365日=▲5,683円
金利調整額が差し引かれる一方で、配当に相当する額を分配相当額として受け取ることができます。配当金が2%以上の銘柄もあり、差し引きでプラスになる場合もあります。金利調整額についてはそれほど神経質になる必要はないかもしれません。Q&Aはこちらでご確認ください。
④出金指示額
最後の項目です。出金指示額は自身が操作して指定した金額です。下落時にわざわざロスカットを早めることような操作はしないと思うのでムシしてOKな項目ではないでしょうか。
なお、公式Q&Aによると出金予定日は”指示日の翌銀行営業日”です。

ロスカットゼロ証拠金の項目 | 想定 | 備考 |
---|---|---|
出金指示額 | 指示しない場合はゼロ | ※鈴さんもカウントせず |
パターンA・・・0円
パターンB・・・0円

4つの計算が終わりました!
総括
計算にお付き合いいただきありがとうございました。まとめると以下のようになります。
計算結果まとめ
ロスカットゼロ証拠金>①必要証拠金+②最大評価損-③未実現金利相当額+④出金支持額
ロスカットゼロ証拠金の項目 | 想定 |
---|---|
①必要証拠金 | 500円×本数 |
②最大評価損 | 元本合計(平均価格×本数×ドル円レート) |
③未実現金利相当額 | ▲0.519円×本数×日数 |
④出金指示額 | 指示しない場合はゼロ |
パターンA(一度上がってから下落)とパターンB(現在価格から下落)のロスカットゼロ証拠金はそれぞれ次の通りでした。
ロスカットゼロ証拠金の項目 | パターンA | パターンB |
---|---|---|
①必要証拠金 | 20,000円 | 15,000円 |
②最大評価損 | 530,200円 | 364,650円 |
③未実現金利相当額 | ▲7,577円 | ▲5,683円 |
④出金指示額 | 0円 | 0円 |
ロスカットゼロ証拠金(①+②-③+④) | 557,777円 | 385,333円 |
③未実現金利相当額は負の値を引くのでプラスになることに注意です。
本数が、A40本とB30本なので 大体4:3=1:0.75になるイメージです。実際は平均価格が下がるので、557777:385333=1:0.69となりました。
考察
最大評価損が最も重要なファクターです。それ以外は金額的に重要性が劣後しそうです。
金利は少額ですし、分配金によって相殺されそうです。ただ今回、金利も分配金も一覧表が公表されていることに気づいたことは収穫でした。
リスク管理において証拠金は重要な要素です。しっかり考えて市場から撤退しないように注意したいですね。
トッピング戦略について
今回は、ロスカットゼロ証拠金をパターンAとBで2通り計算しました。この2つの差額は”未可動資金”であり短期的にみると効率が落ちる要因です。
逆に未可動資金をトッピングすることで効率を上げることができます。まずはロスカットゼロ証拠金を計算することがトッピングに繋がると考えています。トッピング戦略についてもいずれまとめたいと思います。

トッピング戦略か~
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は全然運転を目指して”ロスカットゼロ証拠金”を考えてみました。
投資の世界は不確実性が存在し、将来を完全に予想するのは難しいです。しかし、理論上必要な証拠金の最大値は今回の方法で概ね計算できると思います。
証拠金は余裕を持って入金し、万が一の時に市場から撤退することがないようにリスク管理には気を配りたいですね。
今回は以上です。ではまた!

最後まで読んでくれてありがとうございました!
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