こんにちは。サメハダです。
皆さん、株式投資の出口戦略について考えていますか?
インデックス投資の基本は長期投資ですが具体的に何年くらいを見込むべきでしょうか?
投資の神様ウォーレン・バレット氏によると、理想的な保有期間は「永久」だそうです。
永久ちょっとムリだなーと思ったとき、短くても最低このくらいという情報があらかじめ分かっていれば、プランにも気持ちにも余裕が生まれそうです。
今回はインデックス投資の代表格であるS&P500を積立するケースにおいて、損が出にくい投資期間についてシミュレーションを行いました。

最低でも○年はガチホ!
結論:S&P500を積立投資した場合の期間別収益
まずは結論をお伝えします。投資期間5年における収益率の試算結果は次のようになりました。

内容をご説明します。
課題の設定
ドルコスト平均法により定額積立を続けた場合に、何年間投資すれば黒字化できるかを考えます。
試算の前提
対象資産
株価指数の代表格である米国S&P500に長期投資した場合を考えます。
集計期間
1970年1月~2021年7月までの51年半としました。
なお、今回の試算においては、物価変動の影響を考慮しません。余りにも昔に遡ると物価変動の影響が大きくなってしまいますが、ギリギリ無視できるラインを50年前と考えました。
そのように考えた理由は次の3つの指標です。
①1995年以降の初任給水準をチェック
厚生労働省の初任給の調査では、平成9年から令和元年にかけて、大卒の初任給は1割しか増加していません(男性193,900円→212,800円、女性186,200円→206,900円)。
1995年から直近までの約22年の物価変動は無視できるレベルと思います。
1995年 (平成7年) | 2020年 (令和元年) | 上昇率 | |
---|---|---|---|
大学卒男性 | 193,900円 | 212,800円 | 10% |
大学卒女性 | 186,200円 | 206,900円 | 11% |

②1989年以降の日経平均株価をチェック
日本は「失われた30年」と言われる低成長を抜け出せずにいます。日経平均株価が戦後最高値を記録した1989年12月29日から約32年経過しました。
1989年以降の直近約32年も物価の影響は無視できるものと考えます。

③1970年以降の物価指数をチェック
日銀の物価指数です。モノやサービスの価値を比較することができます。明治34年からあるなんてすごいですね。

企業物価指数は1960年から、消費者物価指数は1970年から存在します。一部抜粋したものを表に示します。
年 | 企業物価指数 | 消費者物価指数 |
---|---|---|
1960年 | 48.1 | – |
1970年 | 54.9 | 31.5 |
1980年 | 109.9 | 74.5 |
1990年 | 104.9 | 91.2 |
2000年 | 96.9 | 99.1 |
2010年 | 97.4 | 96.5 |
2020年 | 100.3 | 101.8 |

現在の水準が100程度だとして、1970年は平均で50程度、1980年くらいは平均で70~80程度でしょうか。この年代は企業物価指数と消費者物価指数が乖離しており、企業物価指数がかなり高いですね。
見た感じ、せいぜい1980年以降が物価変動の影響を許容できるギリギリのラインでしょうか。1970年代はちょっと怪しいかもしれません。
しかし、50年の方がキリが良いので、ひとまず1970年以降を集計対象にします。1970年代の物価指数がやや低いことは覚えておくとして、のちほど考察の際に考えましょう。
為替レート
為替レートはトレンドが予想できるものではないため、今回の試算においては考慮しませんでした。よって数値はドル建てベースの試算とご理解ください。
ただ、為替レートの影響は無視できないほど大きな影響になり得ます。考慮しなかったというか考慮できなかったという方が正しいかもしれません。

- 対象資産・・・S&P500
- 集計期間・・・1970年~2021年(直近51年)
- 為替レートは考慮しない。
- その他取引手数料・税金・分配金等は考慮しない。
データ元と計算方法
データ元
データ取得元は毎度おなじみのInvesting.comさんです。
計算方法
月次の終値データ(N=618)を使用します。毎月一定額を積み立てるドルコスト平均法により、一定期間積み立てた場合の収益率を計算しました。
収益率は対数変換した差(対数差乖離率)を使用しています。
対数差乖離率の計算が正しいか検算してみます。
$$対数差乖離率=LN(Xt)-LV(Xt-1)$$
対数差乖離率の場合は、変化率の平均は相加(単純)平均で求めます。
$$①対数差乖離率(月)の相加平均$$
$$=0.00632$$
通常の変化率の平均は相乗平均で求めます。
$$②変化率の相乗平均=$$
$$\sqrt[618]\frac{4423.23}{89.5}-1=0.00633$$
①②はほとんど一致しているので変化率の計算は大丈夫だと思います。
計算結果
毎月一定額を積み立てた想定で数量を計算し、最終価格で割り戻すことで収益率を計算しました。保有期間は5年、10年、15年、20年の4通りです。
保有期間5年の収益率

折れ線グラフが株価(基準価格)を、棒グラフが5年保有した後の収益率を示しています。
収益率の年数軸は5年後が基準になっています(よって1970年~1974年は空白です)。
1975年、2003年頃、2009年頃に収益がマイナスとなっていることがわかります。
- 1975年頃はオイルショックの時代です。
- 1987年のブラックマンデーは赤字ではないようです。
- 2002~3年は、9.11テロからのイラク戦争、エンロンやワールドコムの不正会計などで景気が冷え込みました。
- 2009年頃は、サブプライムショックです。
保有期間を延ばしてみます。
保有期間10年の収益率

保有期間10年だと、サブプライムショックの時期が赤字です。それ以外はどの時期も収益が黒字化します。
保有期間15年の収益率

保有期間15年は、まだサブプライムショックの時期が赤字です。全体的に収益率の数値(左軸)が向上しています。
ただ、15年間の分配金を考慮すると、取引コストを差し引いてもプラスが増えると考えられます。だいたい15年保有すればまず黒字化すると考えて良いのではないかと思います。
保有期間20年の収益率
念のために保有期間20年も計算してみます。

はい。保有期間20年で全期間黒字となりました。収益率の数値もさらに向上しています。

ベリーナイス!
総括と考察
- 試算では、保有期間15年でリーマンショック時以外黒字、保有期間20年で全期間黒字となった。
- 分配金は考慮していない。分配金を勘案するとさらに収益率は上がりそう。
- 為替レートも考慮していない。為替の影響は小さくないが長期のヘッジは難しい。
- 最低でも15年以上保有すれば黒字化が期待できそう。しかし、リーマンショックを超えるショックが来ることもあり得るためリスク管理は大切。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
今回は、長期投資が何年で黒字化するのか過去50年におけるシミュレーションを行いました。
ショックさえうまく切り抜ければ、15年より短くてもしっかり黒字化できそうです。
今回の試算が少しでも参考になれば嬉しく思います。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
今回は以上です。ではまた!

15年以上保有するぜ!
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