こんにちは。サメハダです。
皆さん金融資産は複数お持ちですか?
ほとんどの方が株式、債券、投資信託など複数に分けて投資していると思いますが、その資産配分はどのように決めていますか?
分散投資を実践する際に、出来るだけリスクは最小に抑えて、リターンが最大になるようなポートフォリオの曲線のことを効率的フロンティアと言います。
この効率的フロンティアは現代ポートフォリオ理論において、資産配分の決め方でひとつの最適解だといわれています。
今回から全三回で効率的フロンティアを学び、ご自身に合うポートフォリオを考えていきましょう!

今をトキメク金融工学!
ポートフォリオのリスクを判別する指標とは
リスクとは
金融工学の分野でポートフォリオのリスクというと、商品の値動きの”標準偏差”を指します。
序盤から統計用語で恐縮ですが、標準偏差とは”バラツキの度合い”のイメージです。
値動きのバタつき度合いのこと。
債券・・・安定している➡標準偏差(=リスク)が小さい
株式・・・値動きが大きい。➡標準偏差(=リスク)が大きい

シャープレシオ
リスクとリターンのバランスを計る指標として”シャープレシオ”があります。

無リスク資産は定期預金の利率や国債利回りを使うことが良くありますが、ここでは0としてシンプルに考えます。式は次のように簡略化されます。

リスク当たりのリターンを表し、同じリスクでどれだけの効率的に超過リターンが得られるかを示す指標です。数値が高いほど効率的です。
2つの資産のリスク
次の2つの資産A、Bを例に考えます。


資産Aのシャープレシオは2%/3%=0.67、資産Bは5%/5%=1.00です。比較すると資産Bの方がシャープレシオが高く、効率的と言えます。
リスクとリターンは表裏一体
リスクとリターンは表裏一体であり、高いリターンを見込めばリスクも高くなります。

リスク回避的な一般投資家は、できるだけリスクは小さく、リターンは大きくなることを望みますが、単一の商品で実現することは難しいです。

しかし、複数の商品を組み合わせたポートフォリオを組むと実現可能です。

ポートフォリオ効果!
2つの資産を組み合わせた場合のリスクとリターン
半々(50%:50%)で保有した場合
ポートフォリオのリスクとリターンを計算すると表のようになります。相関係数を0とすると、リターンは2資産の平均である3.5%となりますが、リスクは2資産の平均よりも減少し2.9%となります。そのためシャープレシオも1.2と資産A、Bよりも高くなります。
これが”分散効果”と言われるものです。


計算方法が気になる人は次をご確認ください。使っている公式は統計学の基本定理です。

公式をチェック!
保有割合を変えるとどうなるか


保有割合を10%毎に変化させた場合についても、上記の公式を用いて求めることができます。


図のように資産Aと資産Bを結ぶ曲線が現れます。割合を連続で変化させることで実線となります。
2つの資産を組み合わせたポートフォリオのリスク・リターンは保有割合に応じて曲線を描く。
曲線の特徴を理解しよう
曲線のカーブは相関係数によって決まります。
相関係数とは相関関係の強さを計る指標で、-1~+1の間を取ります。相関係数が正の値の時は”正の相関”、負の値の時は”負の相関”、0の時は”無相関”であると言います。身長と体重のように相関がある場合は、正の数を取ります。決まった基準はありませんが一般的に次のように解釈されます。
相関係数 | 相関の度合い |
---|---|
0.7~1.0 | 強い正の相関 |
0.4~0.7 | 正の相関 |
0.2~0.4 | 弱い正の相関 |
-0.2~0.2 | ほとんど相関がない |
-0.4~-0.2 | 弱い負の相関 |
-0.7-~-0.4 | 負の相関 |
-1.0~-0.7 | 強い負の相関 |
相関係数が1の場合
相関係数=1、つまり強い相関がある場合、ポートフォリオは次のように直線になります。これはまったく分散効果の働きがないことを意味しています。


相関係数が-1の場合
相関係数=1、つまり強い相関がある場合、ポートフォリオは次のように区の字型になります。この場合は分散効果が最大限発揮されます。逆の動きをする資産を組み合わせることが推奨されるのはこのためです。



へー、面白いね!

次はいよいよ本題。効率的フロンティアとは何かを解説するよ!
効率的フロンティアとは
再び相関係数0の場合を考えます。
曲線のカーブしている部分にリスクが最小となる点が存在します。計算した結果、次のように求められました。この点のことを”最小分散ポートフォリオ”といいます。つまり、資産Aを74%、資産Bを26%保有したときにポートフォリオのリスクは最小となります。


さらに、最小分散ポートフォリオを含むそこから上の曲線を”効率的フロンティア”と言います。
資産AとBでポートフォリオを構築する場合、効率的フロンティア上の保有割合で配分することで、リスク・リターンにおける合理的な判断となります。
効率的フロンティア上の割合で資産を保有することが合理的。
さらに最適なポートフォリオを考える
「効率的フロンティア上の保有割合が合理的だ」と言われると、ではどこが一番合理的かという疑問が湧きます。
個人の効用によって異なるものの考え方によって次の4つが該当します。
- 最小分散ポートフォリオ
- 接点ポートフォリオ
- (安全資産ありの最適ポートフォリオ)
- (安全資産なしの最適ポートフォリオ)

特に、2の”接点ポートフォリオ”は”トービンの分離定理”として有名な理論なので重点的に紹介します。トービンはアメリカの経済学者で、1981年にノーベル経済学賞を受賞しています。
他3つは簡単にチェックしよう!
合理的な選択:①最小分散ポートフォリオ
一つ目は先ほども紹介した”最小分散ポートフォリオ”です。リスクが最も少ないポートフォリオを構築できます。

合理的な選択:②接点ポートフォリオ
資産Aと資産B以外に”安全資産”に投資できる場合、投資の自由度が変わります。
相場変動による元本割れのリスクがない商品。預金や保証付きの商品が該当する。実質的な元本割れがないとして国債が該当することもある。
安全資産は超過リターン0、リスク0の商品で、グラフの原点にプロットされます。このとき、安全資産からもともとの双曲線への接線の領域まで投資可能領域が広がります。そうして接線が”効率的フロンティア”となります。
直線状ポートフォリオは資産A、Bと安全資産を組み合わせることで再現することができます。このとき、資産A、Bのみの組み合わせは接点における組み合わせただ一つに決まります。これは後述する個人の効用とは関係なく独立して求めることができます。この特徴が”トービンの分離定理”と呼ばれるものです。
接点ポートフォリオの割合を計算すると、資産A53%、資産B47%となりました。



ちょっとややこしいけど、接点ポートフォリオが市場から見て最も効率的となります!
合理的な選択:③安全資産ありの最適ポートフォリオ
もともと個人によって最適なリスク・リターンのバランスは異なります。詳しい説明は割愛しますが、これは”無差別効用曲線”としてグラフ上に描くことができます。そして個人の無差別効用曲線と効率的フロンティアである接線が交わる部分が個人にとっても”最適ポートフォリオ”となります。
ただし③④に関してはかなり理論的なものですし、数値計算もできないので簡単なご紹介に留めます。

合理的な選択:④安全資産なしの最適ポートフォリオ
③と同様の理論で安全資産がない場合の最適ポートフォリオも存在します。効率的フロンティアは双曲線になり、個人の無差別効用曲線との接点がそれぞれの”最適ポートフォリオ”となります。
こちらも③同様、理論的かつ数値計算できないので簡単な紹介に留めます。

総括
- 合理的なポートフォリオの考え方として、効率的フロンティアにおける接点ポートフォリオがあります。
- これは個人の効用とは独立していて、市場における最も効率的な資産配分となります。
- 個人で投資する上では、ご自身の保有銘柄における効率的フロンティアと接点ポートフォリオを確認し、現在のポートフォリオ配分の改善点を探ってみてはいかがでしょうか。
- 今回は2資産でしたが、この理論は3資産以上の場合にもより良く機能します。計算ツールも追って公開予定なので是非ご活用ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は効率的フロンティアの理論編として、ポートフォリオの分散効果の計算方法と最適なポートフォリオの考え方をご紹介しました。
理論編の後は、計算ツールの紹介や、実際に存在する組み合わせ商品の効率分析などをご紹介する予定です。
ご意見があれば問い合わせページかツイッターアカウントからご連絡ください。
今回は以上です。ではまた!

最後まで読んでくれてありがとう!
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