こんにちは、サメハダです。
こちらは、住民税の課税誤り発覚から還付を受けた話の後編です。
出来事については前編をご確認ください。⇩
前編では主に税金の数字の話しをお伝えしました。
今回は公務員として窓口業務を行っていた私が課税誤りが起こる原因から、役所での立ち回り方について考察したいと思います。
役所の対応に対する考察
そもそもなぜ間違いが発生するのか
通常、私たちが働いて賃金をもらい、そして、決められた税金を納めるためには複数の組織が関与します。
それぞれの組織においてシステムと人による処理がされています。これらの処理は人が関与する以上一定程度間違えるリスクが存在します。また、仮に一つの組織の処理が完璧だったとしても、データの受け渡しなどのつなぎ目でやはり間違えるリスクが存在します。
構造的に間違えるリスクはゼロではないと考えて、防衛策を講じことが、身を守る上で重要だと思います。
- 納税に関しては、勤務先では年末調整の処理、個人では確定申告等を行う。
- 財務省の国税庁で所得税の処理、地方自治体では住民税の処理を行う。
- 給与の支払いは銀行振込にて行われる。

- システムの誤作動・メンテナンス不備
- 使用者の単純ミス
- ダブルチェック等の運用構造の不備
- 組織と組織のデータ受け渡し
- 外部からの攻撃・コンピュータウイルス など
役所への問い合わせ方法
疑問点やおかしな点があれば積極的に役所へ問い合わせましょう。ほとんどの場合しっかりと対応してくれるはずです。
しかし残念ながらそうでない場合もあります。以下で問い合わせについて考察します。
良い問い合わせと悪い問い合わせとは何か
まずは問い合わせたの成功と失敗を定義したいと思います。ここでの問合せの成功とは、「疑問や質問が解決したかどうか」ということになります。
- 疑問や質問が解決すること
さらに、問い合わせには、時間的・金銭的コストと精神的コストが発生します。
- 時間的・金銭的コスト・・・「電話代が掛かった」「待たされた」「わざわざ訪問した」など
- 精神的コスト・・・「説明がわかりにくかった」「理解されなかった」「侮辱された」「態度が悪かった」など
これらは成功失敗とは別の要素ですが、どうせなら疑問や質問は解決させて、さらに時間的・金銭的コストと精神的コストも合格点になるに越したことはないと思います。

失敗から成功へ、そして、よりコストがかからない問合せ(表の上)を目指したいものです。
良い対応を引き出すために、私が考えるヒントを3つご紹介します。皆様が今後問合せをする上で一助になれば幸いです。
①最初からケンカ腰で話さない
これはあたり前の話しですが、相手も人間なのでバカにしたり威圧するような言動はやめましょう。
熱くなると①自分が言いたいこと言えません。内容がまとまらずに論点がブレるので、正しい意見を伝えることができなくなります。体力も消耗します。
そして、②相手が思う通りに動いてくれません。防衛反応が出て、反発してきたり、サービスの質を下げたり、役割を放棄します。
一時的にうっぷんは晴れるかもしれませんが、良いことは一つもなく単純に逆効果です。嫌味の一言でも言いたい気持ちは誰しもが持っていると思いますが、大人として対応しましょう。
- ケンカ腰にならず丁寧に接する。
②電話の相手を変わってもらう
個人的にはこれが一番有効だと思います。なぜならば中には対人応対が苦手で毎回うまくいかない人が一定数いるからです。丁寧に話した結果どうしても難しいと思う場合は、人を変えてくれるようにその人に伝えましょう。特に理由は述べる必要はありません。
そして誰に変わってもらうのかが重要ですが、オススメは”係長”です。一概には言えませんが、”係長”は大企業の”課長職”と同じくらいの立場であることが多いです。このくらいの立場だとうまくバランスをとって話してくれると思われます。
役職が上がるほどパワーは増しますが、上すぎると調整役としてうまく立ち回ってくれない可能性ができてきます。個人的見解ですが市役所の課長だと上すぎるゾーンと思われます。
市役所の役職 | 大企業の役職 | 役割 |
---|---|---|
部長 | 役員クラス | 議会に参加するなど対外的な業務も多くなる。 |
課長 | 部長クラス | 10~数十人の規模をまとめる。 |
課長補佐、係長 | 課長クラス | 数人~10人程度のグループをまとめる。 |
ブラックリストに載っても問題ない
係長でも難しい場合は、別の係の係長か課長補佐をお願いするケースもあり得ます。なぜならば対人応対が苦手な係長もやはり一定数いるからです。
そんなことするとブラックリストに載ってしまい住みにくくなるのでは、と心配されるかもしれませんが、内部で特に情報共有はされませんし、生活に支障がでることはまずありません。丁寧に話し、正当な理由があるのであればどんどん変わってもらいましょう。
そうすることで、役所で問題が共有され自然と解決に向かうこともあります。
- 相手の応対が良くない場合は、係長級に代わってもらう。
- 相手と係長の名前を聞き、組織のパワーバランスを想像する。
- 別の係長でも難しい場合は、さらに別の係の係長か課長補佐に代わってもらう。
③国家賠償請求という最後の手段
これはあくまで知っておいて損はないという知識です。
公務員の不法行為により損害を受けたときは国又は公共団体にその賠償を求めることになります。これは”憲法17条国家賠償請求権”と”国家賠償法”の内容です。
日本国憲法第17条(国家賠償請求権)
ウィキペディア(Wikipedia)
何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。
国家賠償法第1条(公権力の行使)
ウィキペディア(Wikipedia)
国(日本国)又は公共団体の公権力の行使に関する損害賠償の責任を定める。
基本的には、公務員の不法行為を訴える場合は、個人ではなく、国やその公共団体を訴えることになります。ただし、これは戦後の判例の解釈であって、間接的に個人へ賠償請求が成立することもあるようです。この辺は法律上の話しになるので断定はできません。
なんにせよ滅多に起こらないことではあります。しかしながら、知識として理論武装しておくに越したことはないと思います。単純に「訴えるぞ」と言うより「国家賠償法による国家賠償請求を申し立てる」という方が具体的なのです。
- 憲法第17条国家賠償請求権を知っておく。
- 国家賠償法を知っておく。

以上、役所への問い合わせのポイントを3つご紹介しました。
還付と返還金の仕組み
制度の仕組み
もしも課税誤りに気付かなかったらどうなっていたでしょうか。
実は地方税の過誤納金の還付には時効があり5年を過ぎると請求できなくなってしまいます。これは地方税法に基づく法律なので全国統一のルールです。
地方税法 第18条の3 還付金の消滅時効
税務研究会
地方団体の徴収金の過誤納により生ずる地方団体に対する請求権及びこの法律の規定による還付金に係る地方団体に対する請求権は、その請求をすることができる日から5年を経過したときは、時効により消滅する。

5年は短すぎるよ!
ただ、5年では短すぎるとさらに独自の条例で時効を伸ばす自治体が多いです。これを”返還金”と言います。名前がちょっと変わりますが性質は同じです。期限は自治体によりますが、追加でもう5年というところが多いです。長いところで10年~20年のところもあります。もちろん条例なので制度自体が存在しない自治体もあります。
名前 | 期間 | 法的根拠 |
---|---|---|
還付金 | 5年 | 地方税法 |
返還金 | 5年(0~20年) | 条例 |
基本的に5年+5年=10年くらいまで遡って返してくれます。それ以上は返ってこず泣き寝入りすることになります。
自治体の返還金取扱要領についてはインターネットで公開されている場合が多いです。お住みの自治体の制度について一度調べておくと安心ですね。
戻ってくるお金には利息がつく
還付される際には利息がつきます。これは”還付加算金”または”還付付加金”などと呼ばれます。利率は条例によって決まっています。
例えば東京都江東区では次のような利率です。
期間 | 還付加算金特例基準割合 |
---|---|
令和3年1月1日~令和3年12月31日 | 1.0% |
平成30年1月1日~令和2年12月31日 | 1.6% |
平成29年1月1日~平成29年12月31日 | 1.7% |
平成27年1月1日~平成28年12月31日 | 1.8% |
平成26年1月1日~平成26年12月31日 | 1.9% |
平成22年1月1日~平成25年12月31日 | 4.3% |
平成21年1月1日~平成21年12月31日 | 4.5% |
仮に令和元年に10年前の還付金が10万円あるとします。この場合の還付金はいくらでしょうか。
100,000円×1.016×1.017×1.018×1.018×1.019×1.043×1.043×1.043×1.043×1.045 =134,939円
約13万5千円まで増えて返ってきます。(概算です。実際の計算は日割りで行うなどさらに複雑です。)
他の税目はどうか
今回は住民税に誤りがありましたが、他の税目はどうでしょうか。
固定資産税
日本の地方自治体の税収は市民税と固定資産税が大半を占めます。円グラフは市税収入の例ですが、市民税52%と固定資産税39%、2つ合わせてで91%となっています。
住民税はこれまで述べてきたとおりですが、固定資産税はそれよりもやっかいだと私は考えています。
よく雑誌で「固定資産税を取り戻そう」といった見出しの特集が組まれますが次のような要因が関係します。
- 総務省の定めるルール(「固定資産税評価基準」といいます)の記述が抽象的であり、個別判断が多い。
- 1件ずつ評価するためヒューマンエラーが起こりやすい。
- ”賦課課税方式”という自治体が計算して課税する仕組みであるためチェック機能が働きにくい。
対策としては、自らチェックする癖をつけることだと思います。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は課税誤りの経緯とその対策と言うテーマで、役所への上手な問合せ方法についてご紹介しました。
地域社会を支えてくれる地方自治体とその職員とは上手に付き合っていきたいですよね。
今回の記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
以上です。引き続き一緒にがんばりましょう!
住民税の基本的な仕組みはこちらの記事でご紹介しています。⇩
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